佐久の自然の恵みを活かした地域づくり

お料理 れもん(佐久市臼田)

人、食、そして地酒
それぞれが出会って生まれる
新しい味わい

滑らかな包丁さばきで次々と器に花を咲かせる。板場で腕を振るう店長の濱口雄介さん。カウンター越しに気さくな会話を交わしながら作ってくれたのは、「お料理 れもん」の人気メニュー「信州サーモンとプルーン丼」の彩り美食御膳。
地元佐久生まれの信州サーモンは鮮やかで美しい色合い。繊細な舌触りでうま味と甘みが際立つ上質の脂が特長だ。丼のご飯は、やはり地元産の切原米。ふっくらと甘みのある米に、ほんのり香るふくよかな酸味はこれも特産のプルーンを酢漬けにしたもの。小鉢にサーモンのフライ、サラダの野菜も地元農家の有機野菜と、まさに地域の味覚がそろっている。
濱口さんは旧臼田町(現・佐久市)の出身。都内の料亭や長野県内で和食の修業を重ねた後、両親が35年営んできた食堂・喫茶の「グリルレモン」を改装して「お料理れもん」を開店した。日本料理の伝統を守りながら、工夫を凝らした新しい現代料理を提供している。

この地に店を出してから地域食材のおいしさにあらためて気づいたという。「信州サーモンや佐久鯉、野菜や果物のおいしさも格別です。食材を求め漁場や有機野菜農家を訪ねていくうち、生産者とも懇意になった。食材を通して人に出会い、たくさん勉強させてもらいました。みなさん本当に熱い気持ちで作っています。」直接畑や山に行き、生産者と話し野菜やマイタケなどを仕入れにいきます。

そんな濱口さんのもとには、地元の団体から調理加工やメニュー開発の相談が持ち込まれることも多い。「信州サーモンとプルーン丼」も佐久地域の健康食企画から誕生したメニュー。「提案をもらうとアイディアを生み出すためにあれこれと考えますから、とても刺激になりますね」と、新しい料理作りを心から楽しんでいる。地域食材の可能性を広げ、地元生産者の人も「こういう利用の仕方があるのか」と、自分たちが作ったものの価値を再確認する機会につながった。
「佐久は魅力的な素材が数多くあります。空気も水も土も元気で力強い。その豊かな自然の中で育った素材同士を組み合わせると不思議なほどにしっくりまとまって、新しいおいしさが生まれます」

そして地酒。優れた酒蔵が数多くあり、どの蔵元も個性のある旨い日本酒を作っている。店の冷蔵庫には地酒がずらりと並ぶ。「これからはこの地酒と相性のよい料理も作っていきたいですね」。  「食材がつながって人がつながる。地域の物語を感じるような味を生み出したいです」と語る瞳が印象的だ。