佐久の自然の恵みを活かした地域づくり

りんごやSUDA(佐久穂町)

元ソムリエが育てる
リンゴ農園の可能性

標高900メートル。日本中を探しても、こんなに標高の高いリンゴ農園はないかもしれない。厳しい昼夜の寒暖差が、濃い香りとほどよい歯ごたえを生む。八ヶ岳から吹き抜ける風の通り道である山間地の南斜面は、リンゴの生育に最適の環境だ。 須田さんが両親の農園を受け継いだのは7年前の2009年。前職はソムリエ。神奈川県のレストランで15年、シェフやお客さまと一番近い距離で、食事をよりおいしくするワインの楽しさを提案してきた。

受け継いだ農園を維持しながら、耕作放棄地を利用して栽培面積を広げている。3haある農園で、今年「シナノドルチェ」という新品種の栽培を始めた。「育て始めてものになるには、5年はかかる。その時、佐久といえば“シナノドルチェ”と言ってもらえるように、今若手が頑張らないと。どこよりもおいしい名産地になりたい」と意欲的だ。

ソムリエの経験をいかして、リンゴのお酒であるシードルの生産に取り組み、東御市でワイナリーを経営する玉村豊男さんの協力を得て3年かけてようやく形になった。それが「サクホ・テロワール レ・ポム・ドゥ・ムース」。香草や花のような爽やかさが、天然の香辛料になり素材の旨味を引き立てる辛口のシードル。佐久穂町で養殖が盛んな信州サーモンやアユの串焼きなど川魚にも合う。フランス語の名前に込めたのは「佐久穂の気候風土を泡に閉じ込める」という意味。「ぜひ、佐久穂の空気の中で飲んでほしいですね。この土地にこのシードルが根付くことで、本当の意味で名前が生きてくると思います」。

地元の老舗酒蔵、黒澤酒造とも知恵を出し合った。純米酒に凍らせたプルーンを漬け込み、リンゴ果汁を加えたリキュール。さらっとした口当たりに、濃厚なプルーンの香りとさわやかなリンゴの風味。しっかり冷やしてストレートで。デザートによく合う。

「生産者として、果物をもっと楽しむ提案をし、消費者にうまく伝えていきたい。このリンゴはどんな食べ方や調理が合うのか。シードルは、誰が、いつ、どんな料理と一緒に味わうのか。それが、ソムリエ経験と生産者の目線を持った、自分の使命でもあるのかなと思います」