佐久平駅からほど近い場所にあるイタリアンレストラン「アルソリーソ」。2014年のオープン以来、地元の新鮮な野菜を使ったパスタ、薪窯で焼き上げる香ばしいナポリピッツァ、蓼科豚の薪窯焼きなどが評判を呼び、昼も夜も地元のファンでにぎわっている。
オーナーシェフの竹内晃さんは、隣町の御代田町出身。東京西麻布(当時)にあるイタリアン「アクアパッツァ」の日髙良実シェフの下で修業を重ね、その後は、神奈川県横須賀市や鹿児島県指宿市にある系列店などで腕を磨いてきた経歴を持つ。野菜だけでなく長野県産の山羊肉を使った料理にも取り組み、地産地消を積極的に推進しているシェフのひとり。
今は、佐久市や佐久穂町の契約農家に直接出向いて、生産者との対話を大切にしながら、その季節に採れる旬の野菜を仕入れている。帰郷してから改めて地元佐久平の野菜、特に高原野菜のおいしさと新鮮さに気づいたという竹内さんは、畑に赴くと、必ず収穫したその場で野菜の味見をする。「軽く炒めるか、サッとゆでるか、ローストするか、あるいは生のままで味わうか。畑で直接味わって感動した野菜の味を、イタリア料理の技法でシンプルでストレートに表現していきたいんです」例えば小松菜。佐久穂町の農家が育てる小松菜は大ぶりでも茎がやわらかく、生で食べても苦みがない。
そこで竹内さんは、根ごと収穫した小松菜を一度水に戻してパリッとさせてから茹で、丁寧に裏ごしてピューレにする。そのピューレをぺペロンチーノに加えてみると、栄養価が高まるのはもちろん、ニンニクと唐辛子の主張のある味は優しく和らぎ、目にも鮮やかなグリーンをまとった魅力的な一皿に。
こんな風に佐久平の野菜のおいしさがシンプルでストレートに伝わる一皿を丁寧に作り続けること。それが地元農家と食べ手をつなぐ、料理人である自分の役割だと竹内さんは考えている。 ところで、店で提供する前菜には、季節によって野菜やハーブの花が添えられる。エンドウ、オクラ、ルッコラなどの可憐な花たち。もちろんこの花たちも食べることができる。「野菜の花は、食べてみると、花粉の香りがして甘くておいしい。その野菜のポテンシャルが小さな花に詰まっているように感じますね」実はもったいないことに、皿の上の花を飾りだと思って口にしない人も多いのだとか。もし店を訪れる機会があったら、そのかわいらしい野菜の花をぜひとも味わってみてほしい。