佐久の自然の恵みを活かした地域づくり

つながり自然農園(佐久市内山)

自然が育てる
「お世話をする」循環農法

里山に囲まれた自然豊かな佐久市内山地区。太陽や土、水、空気。自然の恵みで元気に育った農園の作物が出迎えてくれた。「お米も野菜も自然がはぐくんでくれるものです。自然に負担をかけず循環してゆくように『お世話をする』ことが、ぼくの役割だと思っています」と話す「つながり自然農園」園主の磯村聡さん。
自然が好きで、幼い頃から野山に遊び、虫や動植物を観察する少年時代を過ごす。いつしかフィールドワークの仕事を目指すようになっていった。自然環境保全・野生動植物保護の専門学校に進み、卒業後は日光国立公園のビジターセンターでネイチャーガイドとして自然体験プログラムや登山の情報提供に従事。また、少年自然の家でキャンプや自然との関わり方を伝える活動をしていた。そんな磯村さんが佐久市に移ったのは2013年。

「内山には母の実家があり、子どもの頃夏休みを過ごした大好きな場所でした」。祖父が高齢になり、後継者がいないことを知った磯村さん。先祖代々続けてきた畑や田んぼが荒廃するのはもったいないと、仕事を辞め農家を継ごうと心に決めた。本格的に農業を学ぶため、インターネットで農業研修を受け入れる農家を探す。理想とする農業を実践している農園の門を叩き研修に励んだ。循環型の農業と出会ったのはこの時。研修を終えて祖父の田畑を受け継ぐと、炭素循環型農法という持続可能な方式の農業に取り掛かる。もみ殻やオガクズ、キノコの菌床などを土に混ぜ微生物の活動を促すもので、自然に優しいく健康にもいい農業を目指す磯村さんの想いにかなっていた。

「肥料分を追加するのではなく、土そのものがふっくらと栄養豊かになり、野菜の甘みが際立ちます」。作物は多品目を手掛ける。ホームページでネット販売をスタートするとその味が評判を呼び、関東圏を中心に注文が入るようになった。ホームページはイラストレーターの奥さま手描きのあたたかな挿絵で彩られ、“つながり”を感じさせる雰囲気だ。 米作りでは、体験型の田んぼを設けて田植えや稲刈り体験を開催。田んぼで水生昆虫を探す「生きものみっけ」のイベントなどを開催している。

「内山地区には『人と自然』という、魅力的な地域社会資源がそろっています。これを生かして滞在型の里山体験の活動に展開させ、内山に多くの人を呼びたいと思っています。 フィールドワークの経験を活かし、農園で作り手と消費者が生産地でつながりながら、里山を思いきり楽しむ機会を増やしている。